サルサなきサルサ?

 いつだかの年の瀬、東京は天王洲の「銀河劇場」で行われたサルサ・イヴェント。十数組のグループが舞台上でパフォーマンスを繰り広げ、一応審査員がいて、ベスト3をはじめ各賞が発表された。この日は、観客にも1人1個宛て小さなボールが渡され、それを皆ロビーに置いてある各チーム別の瓶の中に入れて投票し、それが順位に反映されるという話だった。 このとき客席にいてショウを観ていた僕は、とあるユニットに目を奪われた。見せ物としての力、華やかさは群を抜いていた。もう1つ、ソツなくきれいにカッコよく踊ったチームとどちらに入れるか迷ったが、結局その華やかユニットに僕は1票を投じた。ただ1つだけ気になることはあったのだが。 やがて審査結果が発表され、結局ソツなしチームが優勝した。華やかの方は確かトップ3にも入らなかったように記憶している。 一通りの表彰が終わったあとで、その日の審査委員長だったか司会だったかの市川奈美さんが舞台上でマイクを持ち、言う。「皆さんに、ここで特別のお知らせがあります。あるチームに特別賞を贈りたいんです。いやー、審査員の間で、すっごい議論になったんですよ、踊りはとっても素敵でしたし、お客さんの支持も高かったですからね。でも、結局は普通の優秀賞じゃなくて、特別賞ということになりました。理由は、サルサじゃない振りの部分が多かったからです」 僕は、2つの部分で我が意を得たりと思った。1つはもちろんこのグループを素晴らしいと思ったことに対して、そしてもう1つは「サルサでない要素が多かった」という奈美さんの発言に対してである。そう、僕にとって「ただ1つだけ気になる」のがまさにそこだった。 サルサ/ラテン的な振りが全くなかったとは言わない。しかし、このチームが演った演目はペア・ダンスの部分が短かったし、サルサ系以外のステップで見せている時間が結構長かったのだ。パフォーマンスとしての雰囲気を取るか、あくまでもサルサとしての質にこだわるか。僕らが常に迷う視点が、舞台の上に提示されていた。 それから数年経った今。僕たちペアがお願いしている振付師の要求するステップが「サルサ的に質の高い」ものであることは言うまでもないが、ペア・コンペティション用の2分の中に、サルサ系以外の振りが結構入っている。僕らは、これらに対し「うーん、こんなに入れてもいいんですかね?」と言いつつも、結局その部分は「パフォーマンスとしての雰囲気」を選んでいる。 このコレオグラファーこそが、この華やかユニットを率いていたダンサーなのだ。6月の本番のあと、審査をする Albert Torres に奈美さんと同じことを言われるのか、それともサルサとしてしっかりと評価されるのか。それは別にして、物語のある、艶っぽいショウを目指して、今日も僕たちは練習を重ねる。

千兵衛の "「居場所カレー屋」まで、HALF A MILE AWAY"

「昼ごはん時はカレー屋さん、午後は若い子たちの居場所にして、晩ごはんの時間にはまたカレー屋に戻る……」そんなお店を将来やることだけは決めた。ただ、カレーを作るのと人と話すのは好きやし今までやり倒してきたけど、店を経営したことがあるわけじゃなし、皆さん、知恵と力を貸して下さーい!というサイト。踊ったり遊んだり、毎日の生活満載の Instagram, Facebook やブログのリンクも貼っています!

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