僕たちを迎えた心優しき土佐-『2日だけ遍路』への道(10)
②おそるべし! 高知文化 例によって、高知出身の人と知り合っても一晩語り明かせるくらいのネタは仕入れましたで。(1)ふらふ 高知の鯉のぼりはたいていもうひと竿立っていて、そこには大きな旗が翻る。この旗を「ふらふ」と呼ぶそうで、ここには大きな鯉を抱きかかえる男の子や源平合戦などの勇ましい絵が描かれる一方、可愛らしいウサギちゃんとクマちゃんをあしらったものや、小山ゆうさんが描く「おーい! 竜馬」の龍馬など、今風のふらふもいくつか見た。 NHKの番組の連続企画で、四元奈生美さんがこの地方を訪れたのがたまたま2008年のこどもの日の直前で、彼女の「てくてくブログ」にまさにふらふの写真が載っている。 このふらふ、語源にはいくつかの説があるらしいが、僕にはオランダ語で「旗」を表す "vlag" だという話が一番しっくりくる。ふらふは5月の3日に訪れた高松では全く見なかったし、高知県の東と西ではまた形が違うらしいし、そんなことでも「一晩」ネタになりそうだ。 (2)すごい数のビールの自動販売機 首都圏に住んでいると、コンビニエンス・ストアが多いからか、ビールの自動販売機が最近減っているのに気がつく。 ところがどっこい、高知市周辺では多いのなんの、お遍路してても誘惑にかられ倒すくらい、至るところにあります。町中でコンビニなどが結構普通にある場所でも、自販機がある気がします。1日おっただけの印象に過ぎませんが、高松にはあんなになかったような……。 やっぱし、「はちきん」と「いごっそう」には、のんべが多いんでしょうか?(3)「月決」駐車場 「つきぎめナントカ」は、少なくとも僕の住んでいる周辺では「月極」と書かれます。ところが高知ではほとんどの場合が「月決」と書かれているのだ。これは、歩き遍路できょろきょろしてないと気がつかん話かも知れませんね―。 「月極」は、確かに慣用として「つきぎめ」と読むことになってはいるが、よく読めば「つききわめ」。そう考えたら、「月決」の方が自然な気がしてくる。まあこれは、「文化」云々と言うほどの話ではないかも知れませんね。③おそるべし! 「お接待」の心 遍路に訪れる人たちに、地元の人が様々なもてなしをすることを総称して「お接待」と呼ぶらしい。 その中で最もたくさんしていただいたものは、挨拶だ。遍路道を歩いていて、こちらが遍路中の者だとわかると、かなりの確率で土地の人は「こんにちは」と言って下さる。ほんの一瞬の出来事なんだけど、それだけで元気が出るし、お四国という場所とつながった気持ちになれる。 また、お寺や渡船場の手前、或いは分かれ道でちょっとウロウロしていると、必ずと言っていいほど誰かが声をかけてくれて、行くべき方向を詳しく説明して下さる。本当に、その土地全体で遍路たちを迎えようとしている感じが伝わってくるのだ。1回前に書いた、「公共物にステッカーを貼ることが許されているみたいだ」というのも、一種のお接待と言える。 そして、八十八か所に魅せられて、いわば「四国の外からお接待を買って出る」人たちもいる。例えば、カンパを集めて沿道に休憩所を作る、徳島出身の歌一洋(うた・いちよう)近大教授だ。 2001年に始まった彼の「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」は、遍路道沿いに計88か所の休憩所を建てようというものだ。僕たちも、29番・国分寺と30番・善楽寺との間の「蒲原ヘンロ小屋」ではお世話になった(写真は歌さんのサイトから拝借)。 結構だらだらとした上りが続くと、何らかの目標が欲しくなるし、それよりも何よりも、ひと休みしたい。そういうちょうどいい場所にこのベンチはあるのだ。これこそまさに、歩く者の気持ちに立ったお接待だ。
0コメント