楽しき哉、職権濫用

 普段は苗字と組み合わせた呼び名で呼んでいる「そのひと」の名前の一文字は、ある果物を表す字だ。それは、彼女が生まれ育った土地の近くに、この実がなる果樹園が多いことに由来していると僕は踏んでいるのだが、正しいかどうか訊いたことがない。だって、まだお知り合いになって3週間しか経っていないのだ。 ところが、その短い間に、彼女はサルサのパーティーに2度も来た。僕と出会うまで、彼女の生活にサルサなんてほとんど顔を出さなかったのに。 6月中旬のある日、彼女は1日だけの研修で僕の仕事場に来た。高齢者福祉関係の職場に勤める彼女は、一緒にやって来た障害者関連の仕事に従事する男性と同様、前提の説明をある程度すっ飛ばせるので、こちらとしてはやりやすかった。2人とも利用者としっかり打ち解け、僕たち職員との間の1日のまとめでも話は弾み、短かったが意味ある1日になった。 僕が帰路について、事業所近くの国道沿いを歩いていると、ついさっき「また今度どこかでー」なんて挨拶して僕より少し早く去ったはずの2人が、駅の側からやって来る。 「あれー?」「すみません岩倉さん! 傘忘れちゃったんですよ」そう、その日は朝雨が降っていたけれど、途中から晴れて、雨のことなどすっかり忘れてしまうような天気だったのだ。傘立てはとっくにシャッターの内側にしまっている。「じゃあ、明日土曜日で私休みだから、また寄ります」と彼女。この天気、この2本の傘が、彼女の運命の歯車を回していったのだ。……ちょっと興味をそそりながら、→

千兵衛の "「居場所カレー屋」まで、HALF A MILE AWAY"

「昼ごはん時はカレー屋さん、午後は若い子たちの居場所にして、晩ごはんの時間にはまたカレー屋に戻る……」そんなお店を将来やることだけは決めた。ただ、カレーを作るのと人と話すのは好きやし今までやり倒してきたけど、店を経営したことがあるわけじゃなし、皆さん、知恵と力を貸して下さーい!というサイト。踊ったり遊んだり、毎日の生活満載の Instagram, Facebook やブログのリンクも貼っています!

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