夢の入口
今日、久しぶりにチャコットの渋谷本店に行った。長年履き続けてかなり傷んできたダンス・スニーカーを買い替えるためだ。 底がボール部分とヒール部分とに分かれていてとても踊りやすいこの靴、僕は同じ商品を2足続けて履いている。今使っているものは、練習をするには十分事足りるが、これで舞台に立つにはちょっと……という状態にまでなってきている。 その靴です。新品と見比べてみると、もともとはもっと靴底にもたくさんの突起があったらしいが、今では見る影もない。 チャコットは、えーと、確か渋谷の東武ホテルの手前にあって、それから、道路を挟んで反対側にももう1店あったよなあ……それぐらい記憶が曖昧になるほど、本当にここの店には行っていなかった(横浜店や町田店には行ってたけどね)。 チャコット3階の靴売場には、バレエ・シューズやトウ・シューズを試し履きするひっつめ髪の少女たちがたくさんいた。その誰もがダンス生活の新たな展開に思いを馳せていて、期待に胸をふくらませているような気がした。 そして、スニーカーを選ぶ僕の隣にやってきた若い男の子は、店員さんに「あのー、サルサやってるんスけど、ジャズの靴がいいって言われたんですよね」と告げていた。おお、小さなバレリーナたちに混じって、サルサの初心者! そういう時代になったか。 そう言えば、僕がサルサやり始めたときって、何履いてやってたっけ? とりあえず、普通のスニーカーやったかなあ? だいたいあの頃(90年代初め)の市川奈美さんのスタジオは、その前の借り主が使ったまんまの薄いじゅうたん張りという、今ではありえない環境だったので(繰り返しますが、首都圏で一・二を争っていたサルサ講師のスタジオが、です。この辺の歴史は、いずれここにも書かんとな)、デリケートなダンス・シューズはとてもやないけど履けんかったわけです。それを考えると、サルサを始めたばっかしの子が、チャコットに靴を選びに来れる。こんな環境になったのも、この15年ほど、たっくさんの方々がサルサの発展に寄与してきたからですよね、感謝感謝。 「サルサやってはるんですか? がんばってくださいね」なーんて、彼に話しかけようとしたおっさんの機先を制するように、お店のおねーさんが僕のお願いしたサイズのスニーカーを持って来られた。 やっぱりこの会社の、日本人のために作られたものはピッタリくる(一応言うときますけど、僕チャコットさんに何も貰てませんで)。カページオの靴も試してみるのだが、やはり横幅がきついのだ。僕は改めて、何年か前のLAワールド・サルサ・コングレスの際に街へ出たとき、気に入った柄の靴があったのに、何足試し履きしてみても合わなかったことを思い出した。ことほどさように、僕のはより日本的な「幅広足」なのである。 しかし、今僕が使っているのと同じサイズのものは、店の在庫が切れていて取り寄せになった。僕が再び「夢の入口」に立つのは、少し先までおあずけになってしまった。僕は、「『彼』のサルサの夢」がしっかり始まることを祈りつつ、店の階段を下りた。
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