夏、サルサ島へ(2)--JLGの優しさ
君を愛する理由は、千個もあるよ そして君自身が、その理由の1つ目だ 通りを歩けば、千個もの詩が浮かんでくる (Razones) 僕は疑ってるんだよ、 君みたいな素敵な女の子が生まれてくるんじゃないか、って (Rompiendo fuente) 川の水のように冷たい それとも、わき出る温泉のように熱い? 時に温かな口づけのよう それは気を鎮めることもあるし 心に火をつけることもある、 もし君が僕を愛してくれるならば (Frío, frío) かつて、サルサ・ロマンティカが全盛だった1990年代、そのまま訳せば演歌になってしまう歌詞がサルサ界の一部を跳梁跋扈していた。 それらの「演歌的歌詞」というのは例えば、「君は僕を捨てて他の男とくっついたけど、そいつと一緒にいる君は全然幸せに見えないよ、早く僕の元に戻っておいで」とか、「君と知り合うまでは、もっと僕の人生は痛みにあふれていた。生きる素晴らしさを僕に教えてくれたのは君だ。だから君に帰って来て欲しい」というような、今更そんなこと言われてもなーなもので、それがサルサやメレンゲのリズムに載せられるからめっちゃミョーな感じだった。その「演歌サルサ」の旗手の1人が、今度日本でも公開される映画 "El Cantante" で主人公のサルセーロ Héctor Lavoe を演じる Marc Anthony だというのは隔世の感がある。 そういう浪花節的なクサさにはある意味背を向けて、本当に聴く者の心に残る歌詞を作り続けたフアン・ルイス・ゲーラ。上に書いた詞(翻訳は僕自身による)はそれぞれ、サルサ、メレンゲ、バチャータのリズムで奏でられた曲だ。 誰か特定の「相手」を想像させるものだけでなく、コーヒー農民や ("Ojalá que llueva café") 彼の母国ドミニカ共和国の先住民族タイーノスに捧げられた歌詞 ("Naboria/daca mayanimacaná") もあり、そこに僕は彼の心の広さを感じる。彼の作ったバチャータやバラーダばかりを集めたコンピレイション・アルバム(元は別のアレンジで作られたものをこれらのリズムで新たに録音したものも含む) "Colección romántica" を夜なんかに聴いてみなはれ、もう別の世界に飛ばされて、ジェットストリーーム……なんか目ぇやないぐらいでっせ。↑アルバム "Areíto", "Naboria/daca mayanimacaná"所収。 日本では90年代頃ほどの知名度はないという印象があるが、ラテンアメリカ諸国や、USAのラティーノ社会での彼の受け入れられ方はハンパではないらしい。そんなスーペルエストレージャ(スーパースター)を呼んで来れるNPO法人Tiempo Iberoamericanoとは一体どんな団体なのか? 正直言って詳しく知らんのですが、そんなまだ見ぬTIに対する思いを、次回は語りたい。
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