これこそ、それだった -This 'Was' It
コンサートの中心人物は、意外とリハーサルをテキトーに流していた。歌はテキトーに跳ばし、踊りもソロの振りは結構ええ加減にやっていたように見えた。 しかし、バックのミュージシャンやダンサーたちはリハから全開なのが見えるし、マイケルも、別の歌手やダンサーと合わせねばならないパートでは真剣に演出を考えていて、その緊張がカメラのこちら側にもびんびん伝わってきた。1時間半以上にわたってマイケル・ジャクソンのみを追い続けた "This Is It" は、そんな映画だった。 もちろん大まかなものはできているにせよ、リハをしながら細部を作っていく作業は、同じ舞台人として、とても興味深かった。ジュディス・ヒル(とても素敵な東洋人でしたねー)とのデュエット曲 "I Just Can't Stop Loving You" のラストで、 "....loving you..." と歌いながら「僕を見るんじゃなくて、お客さんを見て終わるんだ」と身振りで指示するマイケル。 "Beat It" の終わりしなに、ギターとジャケットを燃やす演出を指示するマイケル。どちらも、完成度の高い舞台を最後まで追求する姿勢が描かれている。 クレジットも一通り流れた後の映画のエンディングにあえて、リハーサル中の「ちょっとここで休みを入れよう」と言うマイケルの言葉を入れる、心憎い演出。MJは今休んでいるだけ、すぐに甦るという制作者の思い入れなのだろうか。 みんなで肩まで抱き合って作ったコンサートを実現させることなく、彼は逝った。素晴らしいだけに、僕にとってあまりにも重かった、この映画。僕の80年代の音楽史を確かに彩ったミスター・マイケル・ジャクソン、安らかに眠れ。
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